ボディに穴あけて盗む! 恐怖の「新型」CANインベーダーで人気車が危ない?
2025年3月3日、日本損害保険協会は最新の「自動車盗難事故実態調査」の結果を発表しました。
その中での車名別盗難状況ではトヨタ「ランドクルーザー」(688件)で最多。次いてトヨタ「アルファード」(289件)、トヨタ「プリウス」(235件)、レクサス「LX」(109件)、レクサス「RX」(89件)と続きます。
このようにトヨタ/レクサスが上位を占めていますが、最新の盗難手口にはどのようなものがあり、またその対策にはどのようなものが有効なのでしょうか。

まさか…ドアに穴があけられている…(画像提供:一般社団法人自動車盗難防止協会)
まさか…ドアに穴があけられている…(画像提供:一般社団法人自動車盗難防止協会)トヨタの40系アルファードやランドクルーザー(250/300後期)、レクサスのLXなど新しいモデルにはCANインベーダーでの盗難を阻止する目的で、メーカー純正の盗難防止装置「トヨタセキュリティシステム」が標準装備されています。
【画像】「えっ…!」 これが「盗まれやすいクルマ・ワースト10」です! 画像で見る(23枚)
また装備無しの車種もディーラーで後付けすることが可能です。
この装置はCANインベーダーによる窃盗に一定の効果があったのですが、その後、これを突破する目的で誕生したのが「GAME BOY」(キーエミュレータ)。
2024年春以降、日本国内でGAME BOYによる盗難報告が増え始めました。
盗みの手口がGAME BOYなのか、CANインベーダーなのか。
それは窃盗犯が盗んで行く様子が録画された防犯カメラの映像や、盗難後、運よく発見された後の車両を見てもわかります。
具体的な違いは以下の通りです。
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●GAME BOY
クルマに一切、触れることなくクルマ本体から発する信号を受信しGAME BOY本体の中に、スペアキーのデータ(スペアキーのように使用できる)を解析してメモリできる。
いったんデバイス(GAME BOY)に記録して後日盗みに行くパターンもある。ボディの外装には一切傷をつけずに盗むことが可能。
●CANインベーダー
車種によって接続ポイントは異なるが、バンパーをずらすなどしてヘッドライトやタイヤハウスの奥からCANバスにアクセスしてドア解錠、エンジン始動して自走で盗んで行く。
プラドや30アルファードはCANインベーダーでの窃盗が相変わらず多い。
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そして、これらに加えて2024年秋頃からじわじわ増え始めている驚きの窃盗方法があります。
ランクル250やLXで盗難未遂の報告がSNSなどで上がっており、未遂に終わったクルマの写真を見るとどのクルマも後部ドアやリアゲート周りの一部6-7cm四方が切り取られています。
左フロントドア下方に加えてリアゲート近辺を切り取られているクルマもあります。
たとえ未遂で終わってもオーナーにとってこの光景はとても悲しく大きなショックを受けてしまうでしょう。
実はこの手口もCANインベーダーの一種です。
しかし、接続の場所が異なるためメーカー純正の対策装置含めて従来のCANインベーダー対策では対応できません。
なお、この新型CANインベーダーにはGAME BOY(キーエミュレータ)と同様に、鍵を複製する機能がついているタイプもあります。
最新の窃盗ツールに詳しい一般社団法人自動車盗難防止協会では、新型CANインベーダーについて以下のように説明しています。
「新型CANインベーダーは助手席側ドアの下部や後ろのナンバー(リアゲート周辺)付近に穴を開けることから始まります。
ドアパネルの場合は『アウターミラーコントロールECU』にデバイスを接続し、ドアを解錠しエンジンを始動させて盗んで行きます。
また未遂に終わったクルマを調べてみるとリアゲートにも盗難しようとした痕跡が確認できました。
リアゲートでは外側のパネルを切り開いてゲート裏にある『マルチプレックスネットワークドアECU』に接続しています。
ただし、リアパネルはドアパネルよりも複雑な二重構造になっているため手が入りにくい。
助手席側ドアに穴を開けたほうがモジュールまで手が届きやすいのですが、『アウターミラーコントロール』はグレードによってついていない車種もあるのでその場合はリアゲートにも穴を開けられる可能性があります」
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新型CANインベーダーは従来型のCANインベーダー対策である純正のセキュリティシステムをはじめ、指紋認証やスマホによる始動ロックなどの純正装備では対応ができないので気を付けてください。
最新の「40系アルファード」も新型CANインベーダーで突破される?
ランクル250、300、LXでは新型CANインベーダーによる盗難、または盗難未遂が起こっていますが、それでは40系アルファードはどうでしょうか。
SNSや盗難情報の投稿を調べたところ、40系+新型CANインベーダーによる盗難未遂は現在のところ見つけられませんでした。
その理由について前出の自動車盗難防止協会に聞いてみました。
「40アルファード、レクサスLMはドアの中の配線取り回しがランクルやLXと異なっており、外部からドアに穴を開けて侵入しようとしても、さらにもう一枚鉄板があります。
ECUの配線までアクセスするにはかなり困難な構造になっていることを確認済みです。
しかし、ランクルでもリアゲートに穴を開けてアクセスできるように、40系アルファードもドア以外にアクセスポイントがある可能性があります。
現在、新型CANインベーダーがアクセスできるドア以外の場所を調査中です」

上:20系に張り替えられた30系の車台番号/下:40系の車台番号刻印場所は30系は違うことがわかる(画像提供:筆者)
上:20系に張り替えられた30系の車台番号/下:40系の車台番号刻印場所は30系は違うことがわかる(画像提供:筆者)アルファードは2023年には700台が盗まれて警察庁発表の車名別盗難認知件数の1位となりました。
多くが30系アルファード+CANインベーダーで盗んだあとは、20系など低価格の古いモデルや30系の大破車両から車台番号を移植し、盗難車であることがわからないよう細工をした「目玉抜き車両」として国内外で流通していたとみられます。
では、40系アルファードで「目玉抜き」はできるのでしょうか。
実は40系アルファードは20系や30系から切り取った車台番号を張り替えることは不可能です。
刻印の場所も形も違うことが理由。さらに、40系アルファードは「OBD検査」(※令和3年10月1日以降の新型車を対象として、令和6年10月1日以降の車検において実施)の対象となるため検査時に診断機をあてることで本来の車台番号が即判明します。
つまり、そこで車台番号を張り替えたことがその場で明らかになるということです。
新旧CANインベーダーや目玉抜きについては防御能力が高いと言える40系ですが、GAME BOYなどのキーエミュレータでは盗まれる可能性が大です。
GAME BOY対策が可能な社外セキュリティ(パンテーラやクリフォード、ゴルゴ、イグラなど)やキタコ(K-TECT)に代表される物理ロックの併用を強くお勧めします。
これらのセキュリティはもちろん、ランクル250や300が新型CANインベーダーで盗まれることからも確実に守ってくれるでしょう。