「eKスペース」との顕著な差別化で「デリカミニ」らしさがより色濃く
三菱「デリカミニ」がフルモデルチェンジを受け、2世代目へと進化します。そんな新型で注目すべきポイントといえば、史上初めて「誕生時から『デリカミニ』として開発されたモデルである」ということでしょう。
史上初といっても、「デリカミニ」にはまだ2年半の歴史しかありません……が、そんな突っ込みは野暮ってもの。当初から「デリカミニ」として開発された新型は、その分、妥協がないクルマに仕上がっています。
【画像】「えっ!…」人気の“ブサかわ路線“を継承! これが売れる予感しかない三菱の新型「デリカミニ」です(30枚以上)
三菱の新型「デリカミニ」
実は従来モデルである初代は、イチから「デリカミニ」として開発されたモデルではありませんでした。新規モデルではなく、実質的には「eKクロススペース」のビッグマイナーチェンジモデルという位置づけだったのです。
もちろん、ビッグネームである「デリカ」の名を冠するべく、三菱自動車はエクステリアデザインを大幅に変更。さらに走破性も高めるなど、名前だけでなく中身も心機一転が図られていたのです。
そのため初代の基本設計は、あくまで「eKクロススペース」がベースでした。今回、デビューからわずか2年半でフルモデルチェンジを受ける事情も、そこに要因があるようです。
開発当初から「デリカミニ」として開発がスタートした新型には、兄弟車として「eKスペース」がラインナップされており、この2台は広い範囲で設計や部品が共用されています。しかし、最初から「デリカミニ」の存在を前提に開発されたことにより、新型は初代と比べて大きな変化を手に入れています。
最初から「デリカミニ」の存在を前提に開発された結果、何が起きたのか? すなわち新型は、「デリカミニ」だけの専用設計部が拡大され、「eKスペース」との差別化がより顕著になっているのです。
その一例が、ダッシュボードに見て取れます。新型「デリカミニ」のそれは新しい「eKスペース」のものとは別設計となっており、軽自動車の常識を覆す手法が採り入れられています。軽自動車って、可能な限り他モデルとパーツを共用し、コストを抑えてナンボの世界ですからね。
そのダッシュボード、基本的なレイアウトは2モデルとも同じながら、左右が跳ね上がっている「eKスペース」とは異なり、「デリカ」はあくまで水平基調のデザインが貫かれています。
助手席前を見ると、大きく「DELICA」というロゴが彫られているのに加えて、中段部分がトレー状かつ、かつて多くのクロスカントリーSUVに備わっていたアシストグリップをイメージさせる形状となっています。新型「デリカミニ」はあくまで、SUVらしいアクティブな雰囲気を重視しているというわけです。
また、ダッシュボードの中央下部にある、トランスミッションのセレクトレバーやエアコン操作部などが集約されたセンターパネルも、新型「デリカミニ」専用のもの。さらにそこには、「三菱のSUVらしさ」を継承する、大きなダイヤルが組み込まれています。
三菱の新型「デリカミニ」
このダイヤルはドライブモードを切り替えるためのもので、新型「デリカミニ」は「ノーマル」、「エコ」、「パワー」、「スノー」、そして「グラベル」という5つのモードから天候や路面状況、好みに応じて、走りの特性を切り替えられるようになっています。
実はこれ、「デリカD:5」や「アウトランダーPHEV」といった悪路走破性に優れる三菱車には定番のアイテムで、それを新型「デリカミニ」にも横展開してきたというわけです。三菱車らしい個性を感じさせるだけでなく、瞬時に直感的に操作できるというメリットも。新型「デリカミニ」はこういう細部にも、三菱の魂が込められているのです。
その上で「三菱のSUVらしさ」全開だな、と感じるのが、「グラベル」モードが設定されていること。フツーの軽自動車や軽SUVではまず考えられない、三菱車らしいモードであり、それを軽自動車では意外な大型ダイヤルで操作できるという点も、新型「デリカミニ」らしい部分といえるでしょう。
先進的な雰囲気になった運転席まわりのデザインも大いにアリ
新型「デリカミニ」のスタイリングは、新しくなってもしっかりと“「デリカミニ」感”の強いものとなっています。
三菱の新型「デリカミニ」
ヘッドライトには、半ドーナッツ状のシグネチャーユニットが初代より受け継がれていますし、誰がどう見ても「デリカミニ」にしか見えないルックスに仕上がっています。
興味深いのは、新型の開発は初代と並行しておこなわれていたというエピソード。しかも初代が誕生する頃には、新型のデザインもほぼ固まっていたといいます。
しかし、従来モデルの発売後、新型のデザインは大きく軌道修正されたのだとか。当初のプランでは、新型のデザインはもっと無骨な、オフローダーテイストのものだったといいます。しかし、初代のヒットを受け、人気の要因のひとつとなった“ブサかわな雰囲気”を、新型でも継承することになったのです。ヒット作の裏側には、何があるか分かりませんね。
“「デリカミニ」感”が強いルックスの中には、初代から変わった部分ももちろんあります。そのひとつが、フロントウインドウの角度。
新型のそれは、ルーフの先端が初代に比べて10cmほど前方に出ており、その分、フロントウインドウの角度が立っています。これは車内の開放感アップと、斜め前方の視界を良化させるねらいからです。
一方のインテリアでは、ダッシュボード自体の構成が激変しています。メーターパネルが液晶ディスプレイとなったことから、メーカーオプションの純正カーナビ装着車ではダッシュボード上に2枚の大きな液晶が並び、モダンな雰囲気へと様変わりしています。初代に採用されていたアナログメーターも確かに味わい深いものでしたが、新型の先進的な雰囲気も大いにアリだと筆者(工藤貴宏)は思います。
そのほか、キャビンのパッケージングは基本的に同じものの、ステアリングの位置がわずかに手前側=ドライバー側に寄っているのは、初代からの変化のひとつです。これによってドライビングポジションの最適化が図られ、大柄なドライバーでもしっくりくる運転姿勢を取れるようになったのは朗報ですね。
三菱の新型「デリカミニ」
また、メーカーオプションの純正カーナビはGoogle搭載型となり、スマホがクルマに内蔵されているかのような感覚で操作できるのは好印象。
加えて、三菱自動車初となる、真上からだけでなくアングルを8カ所から任意に選べる“3Dマルチアラウンドモニター”や、ボンネット下が透けて見えるような“フロントアンダーフロアビュー”などの設定も、新型「デリカミニ」の大きなトピック。先進機能もどんどん投入されているのです。
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筆者が新型に接してみて安心したのは、なんといっても「デリカミニ」は新しくなってもしっかり「デリカミニ」だった、という事実です。
こういう“キャラクターがしっかり定まったクルマ”は、モデルチェンジの際にそれを上手に継承しないと、ユーザーに“コレジャナイ感”を与えてしまいます。だからこそ、モデルチェンジは難しいのですが、新型「デリカミニ」は、しっかりと個性を継承しているどころか、より一層“「デリカミニ」感”が強まっていたのです。
新型もまた、ヒット作となりそうな予感しかありません。