いま見るとエモすぎる! 絶滅したのが惜しまれる[リトラクタブルヘッドライト]搭載車4選
最近のクルマを見て思うのは“どれも似たような顔つき”だということ。それが世界基準なのかもしれないが、個性という点では今ひとつ……。そう考えると、絶命したリトラクタブルヘッドライトってすごくエモくない?
文/FK、写真/トヨタ、マツダ
1970年に終了するまでに337台が生産されたトヨタ 2000GT。2020年7月にはTOYOTA GAZOO RacingがGRヘリテージパーツプロジェクトとして補給部品を復刻し、国内外向けに再販売した
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今さらながら…数多くの“日本初”を採用したトヨタ 2000GTはやっぱりスゴい!
いま見るとエモすぎる! 絶滅したのが惜しまれる[リトラクタブルヘッドライト]搭載車4選
1970年に終了するまでに337台が生産されたトヨタ 2000GT。2020年7月にはTOYOTA GAZOO RacingがGRヘリテージパーツプロジェクトとして補給部品を復刻し、国内外向けに再販売した
国産車で初めてリトラクタブルヘッドライトを採用したモデルは、1967年5月に発売されたトヨタ 2000GT。
1960年代は世界中でさまざまなスポーツカーが数多く誕生したが、トヨタもその流れを汲むべく、1964年の第2回日本グランプリ終了後からヤマハの協力を得て高性能グランツーリスモの開発に着手し、トヨタ 2000GTは誕生した。
その特徴は社内デザインによって生み出された、空気抵抗を極端に減らした車高が低いクーペボディだろう。
まずはエンジン、シャシー、室内寸法などの位置と大きさを決め、それを理想的な形状で包んだボディは唯一無二の仕上がり。
前面面積を減らすために、ノーズ先端も面というよりは線をイメージしたデザインとなっており、それにあわせるべくヘッドライトもそれまでの国産車には前例がなかったリトラクタブルヘッドライトが採用された。
そんなトヨタ 2000GTの流麗なフォルムは世界的にも評価され、映画『007は二度死ぬ』ではジェームス・ボンドの愛車として登場。アストンマーチンをはじめとする欧米の名車とならび、大きな注目を集めた。
加えて最高速度220km/h、最高巡航速度205km/h、0-400m加速15.9秒、0-100km/h加速8.6秒という世界トップレベルの動力性能もトヨタ 2000GTの特筆点。
1966年10月1日から3昼夜にわたって行われたJAFとFIAのルールによる超高速耐久トライアルでは平均時速206.18km/h、連続走行78時間、1万6000kmを走破して3つの世界新と13の国際新記録も樹立している。
今さら説明するまでもないだろうが、トヨタ 2000GTはリトラクタブルヘッドライトの他にも直6 DOHCの2000㏄エンジン、ダブルウィッシュボーン/コイルの4輪独立懸架、4輪ディスクブレーキ、4輪マグネシウム合金製ホイールなど、日本の量産車としては初めて採用するものが満載だったことも付け加えておきたい。
初代モデルから一貫してリトラを採用し続けたRX-7
1970年のトヨタ 2000GT生産終了以来、しばらくの間はリトラクタブルヘッドライト搭載車両が途絶えていたが、その沈黙を破ったのが1978年3月にデビューしたサバンナRX-7。
軽量小型のロータリーエンジン搭載を象徴するかのような低いボンネットフードを採用したサバンナRX-7は、空気抵抗係数(Cd値))も0.36という空気抵抗の少ない優れた数値を実現。
これを実現したのが点灯時のみヘッドランプがボンネット先端に顔を出すリトラクタブルヘッドライトであり、“このクルマが特別である”ということをいっそう強調する大きな特徴となったことは言うまでもない。
サバンナRX-7はその後、7年半にわたって生産が続けたれたが、1985年10月にフルモデルチェンジで、より高次元のスポーツカーへと進化。
先代が採用したリトラクタブルヘッドライトを継承しつつもエクステリアデザインは大きく進化し、エンジンも従来の12A型から13B型へと変更。
排気量654cc×2の2ローターロータリーの13B型エンジンは空冷インタークーラー付ツインスクロールターボチャージャーを装備して、さらにスポーツ色が強められた。
そして、1991年12月には国産車としては最後のリトラクタブルヘッドライト搭載車両となった3代目のRX-7が登場。
RX-7として初めて3ナンバー専用車体を採用した3代目は、全長・ホイールベース・全高は2代目から小さくなっていたが、全幅を3ナンバー枠に広げることでより低い姿勢で走行安定性を追求するとともに、運動性の向上を目指した。
カローラIIなどの大衆車も採用するほどの市民権を得ていたリトラ
いま見るとエモすぎる! 絶滅したのが惜しまれる[リトラクタブルヘッドライト]搭載車4選
“これが2BOX未来形。エアロ・スタイリッシュ 流星ライナー”というキャッチコピーのもとにデビューした2代目のカローラII。そのシャープなラインとクリーンな面構成は当時の最先端を行くものだった
リトラクタブルヘッドライトが採用されるのはスポーツカー……というイメージをもっている人も多いかもしれないが、個性的なクルマが数多く登場して多様性にあふれていた1980年代後半は大衆車にも採用されるほどの市民権を得ていた。
その代表的なモデルといえるのが、1986年5月に発売された2代目のカローラIIだ。
1982年5月に登場したターセルとコルサの2代目にあたるモデルとして発売されたカローラIIの初代モデル。
当時、若年層や女性層の支持を得て伸びの著しかった3ドアハッチバックと5ドアハッチバック、3ボックス4ドアセダンの3つのボディスタイルが採用された。
その後登場した2代目は1984年10月にFF化したスターレットのプラットフォームを使用することでショートホイールベース化を図り、エンジンも従来の縦置きレイアウトから横置きに変更された。
そんな2代目の3ドアスポーティグレード(SR系)に採用されたのが、リトラクタブルヘッドライトだった。
当時のカタログには“進んだヤングのために、「3ドア・リトラ」。”と記されており、リトラクタブルヘッドライトの採用が2代目の大きなセールスポイントのひとつになっていたことがうかがえる。
また、リトラクタブルヘッドライトを採用したモデルはボディ一体のカラード大型バンパーを装備して、精悍なフロントビューとスポーティなスタイリングを実現。まさに“エアロスタイリッシュ”といった佇まいを漂わせていた。
ちなみに、カローラIIと同時期に発売された姉妹車のコルサとターセルにもリトラクタブルヘッドライトが採用されており、街中でもこれらのモデルを頻繁に見かけることが多かった。
流し目風の半目開きがアイコニックだった3代目フェアレディZのセミリトラ
最後に紹介するのはちょっと変わり種のリトラクタブルヘッドライト搭載車両。それは、1983年9月にデビューした3代目のフェアレディZだ。
2代目の登場から5年1カ月ぶりとなったフルモデルチェンジで国産モデルとしては最高となる230psの出力を誇る、国産車初の3.0リッター V6ターボエンジンを搭載して大きな話題となった3代目。
また、フェアレディZの伝統的なスポーツカーイメージを踏襲しながらも、高次元の走行性能を実現するべくエアロダイナミクスを徹底的に追求。
空気の流れとの融和を実現した流麗かつ精悍なスポーツカースタイルも大きな特徴だったが、その結果、空気抵抗係数は0.31と当時の国産車としては最高レベルを実現している。
そんな3代目のヘッドライトもまた空気抵抗を低減するために採用されたものだったが、ここまでに紹介してきた3モデルとは異なり、あえてライトのすべてを隠さない半目が開いたようなセミリトラクタブルヘッドライト(正式名称:パラレルライジングヘッドランプ)を世界で初めて採用。
その動きはもちろん、ビジュアル的にも3代目を象徴する“個性”になったことは言うまでもないだろう。
ちなみに、3代目フェアレディZと似たようなセミリトラクタブルヘッドライトは、1983年6月に発売された初代CR-Xや1981年5月に発売された初代ピアッツァも採用。
フェアレディZとCR-Xは1代限りの採用にとどまったのに対して、ピアッツアは2代目でも採用されたが、1995年に生産が終了。その後、セミリトラクタブルヘッドライトを採用したモデルは存在しない。
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