21/05/2025 · 4 ヶ月前

【10年ひと昔の新車】スズキ ワゴンR & ワゴンRスティングレーの完成度は驚異的だった


「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、スズキ ワゴンRだ。

スズキ ワゴンR & ワゴンRスティングレー(2012年:5代目フルモデルチェンジ)

ワゴンR伝統の縦型風ヘッドランプは、5代目となった新型でも踏襲された。品の良さを保ったままワイドな安定感を見せるスタイルだ。

結論から先に言ってしまうと、新型ワゴンRは良いクルマだった。走り出して最初に実感したのは、低燃費技術のひとつ「エネチャージ」のありがたみ。素早く電気を出し入れできるリチウムイオン電池を軽自動車として初めて搭載し、減速時に高出力オルタネーターが回生する電気を無駄なく蓄えてくれるシステムだが、これによって、エンジンパワーを使ってオルタネーターで発電する必要が最小限で済む。

結果的に、オルタネーターを回すための余分な負荷が減るため、エンジンフィールがすっきりしている。MRワゴンから搭載されたR06A型エンジンは、もともとかなり力強くてパワフルな印象。だが今回の取材では4名フル乗車+撮影機材満載という、ターボなしのNAエンジン車にはキビしい条件にもかかわらず、ターボではなくても十分かなと思わせるほど力強い。

もちろん、車両重量が比較的軽いことも影響しているとは思うが、アクセルペダルに軽く足を置いているだけで、スルスル〜ッと淀みなくスピードが上がっていく。しかも、エンジンやCVTの唸り音も控えめで、高回転まで回さないとパワー不足を感じがちな、NA軽自動車への先入観を気持ち良く覆してくれた。

ワゴンRのインパネ。基本デザインはスティングレーと共通だが、センターダッシュ部などはよりシンプルな意匠となっている。

もうひとつ低燃費技術「新アイドリングストップシステム」のフィーリングも良かった。減速していくと13km/hからエンジンがストップする制御が盛り込まれているのだが、注意していないと気がつかないほど自然に止まる。そのままブレーキを踏んで停止して、再始動したときに「エンジン止まってたんだ!?」と、ようやく気がつくくらいだ。再始動も実に静かで、ブルンという不快な振動が少ない。頻繁にアイドリングストップしがちな街中では、かなりうれしいポイントだ。

さらに自慢の新技術「エコクール」の効果もしっかり体感できた。これはエアコンに蓄冷材を内蔵することで、冷気を「貯めておく」工夫。アイドリングストップ時には、この蓄冷材を使って送風される空気を冷やすシステムだ。

取材日は記録的な残暑が継続中で、当然エアコンがかかってないと室温がすぐに上がってしまう状態だったのだが、アイドリングストップのまま長い間信号待ちをしていても、エンジンが再始動してしまうことは一度もなかった。もちろん車内は涼しくて快適なまま。実用燃費の向上という意味では、かなり効果があるだろう。

軽自動車らしからぬ、しっかりした乗り味

ターボエンジンを搭載しスティングレーの走りは、まるで大排気量のNA車に乗っているかのような感覚すらある。

基本性能としては、まずボディがしっかりしていた。軽で初めてAピラーまわりに980MPa級の超高張力鋼板を使ったと特筆するだけのことはあり、ボディを先代に比べて軽量化しているにもかかわらず、ガッシリ感が増している。FXリミテッドの2WD(先代のアイドリングストップ仕様車)比で、もろもろ全部で70kgも減量しているというが、ペラペラ感はまったくなく、むしろたくましくなった印象だ。

足まわり系の各部も軽量化され、細部のフリクションが低減されて、とてもスムーズに動いてくれるところは、軽自動車らしからぬ好印象。ステアフィールもしっかり安心感がある。ただ、パワーステアリングのフィーリングだけは、もう少し洗練された印象が欲しいところだ。

スティングレーは、ターボモデルのTに試乗した。よりパワフルなことは言うまでもなく、低回転域から気がつかないうちにパワー/トルクがモリモリと上乗せされていく、イマドキのターボ車らしい味付けは、大排気量のNAエンジンに似た感覚すらある。

さらにスティングレーならではの高い質感や静粛性には驚かされた。FXリミテッドに乗ったときに「もうターボはいらないかな」と一瞬思ったことは事実だが、スティングレーのターボモデルはさらに格上感がはっきりと感じられる。

ただし乗り心地の面では、ターボモデルに装着された15インチタイヤの場合は少々硬め。フル乗車ならあまり問題ないものの、1名乗車で路面の荒れたところを走ると、あたりが少々硬目に感じられることもあった。1名乗車の街乗りが多いなら、14インチタイヤのNAモデルの方が快適かもしれない。しかし、極端に言えば、これくらいしか文句のつけどころがない。新型ワゴンRは、やはり軽マルチワゴンの王者にふさわしい革新ぶりを楽しませてくれたのだった。

ワゴンRスティングレーのシートはクッションストロークもタップリしており、リアシートのアレンジも楽。利便性は高い。

●全長×全幅×全高:3395×1475×1640<1660>mm

●ホイールベース:2425mm

●車両重量:790<820>kg

●エンジン:直3 DOHC<同ターボ>

●総排気量:658cc

●最高出力:38kW(52ps)/6000rpm<47(64)/6000>

●最大トルク:63Nm(6.4kgm)/4000rpm<95(9.7)/3000>

●トランスミッション:CVT<7速マニュアルモード付きCVT>

●駆動方式:横置きFF

●燃料・タンク容量:レギュラー・27L

●JC08モード燃費:28.8km/L<26.8>

●タイヤサイズ:155/65R14<165/55R15>

●当時の車両価格(税込):124万9500円<149万6250円>

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