08/05/2025 · 5 ヶ月前

GRヤリスやLBX MORIZO RRを生産する「GRファクトリー」、モータースポーツ車両ゆえにこだわる性能とは


GRのハイパフォーマンスモデル GRヤリスとGRカローラ、そしてレクサスのLBX MORIZO RRを生産するラインが、トヨタ元町工場にある。ここ「GRファクトリー」では、質と量を好バランスさせるための工夫が施されていた。

※タイトル写真はAGVに乗せられて移動する、足まわり搭載前のGRヤリス。

ベルトコンベアによる流れ作業ではない、セル生産のメリット

GRヤリスやGRカローラなどといったトヨタが生産する、モータースポーツの技術を投入したハイパフォーマンスモデルたちは、特殊な生産工程を経てユーザーの元に届けられている。

そもそもこうしたモデルは、専用開発されたパワートレーンや強化ブレーキ、4WDシステムなどの高性能なパーツをパーツを採用するだけでなく、ボディの剛性を高めるための設計が行われている。GRヤリスを例に標準車と比較すれば、構造用接着剤の長さは約2.3倍にあたる35m、スポット溶接打点の数はドア枠を中心に300点増やして4500点とするなどの補強も行われている。

モータースポーツで通用するための専用設計が施されてたGRヤリスのリアゲート開口部。GRファクトリーではラリー2で使用されるGRヤリスのホワイトボディも生産している。

これはつまり、製造ラインにおける工数が格段に多いということに直結する。しかも、部品点数が増えれば取り付け確認作業が、スポット溶接打点が増えれば超音波検査や金槌で叩くタガネ検査の項目が増えるのも当然のこと。ハイパフォーマンスモデルの生産には手間も時間のかかるのだ。

そのため、一般的な生産ラインで標準仕様の車両と混流生産するのは非効率的。そこでトヨタはモータースポーツ車両専用工場「GRファクトリー」を、2020年9月のGRヤリス発表に合わせて稼働。現在はGRカローラとレクサスのLBX MORIZO RRもあわせて生産。モータースポーツで通用する車両を、より高精度に組み上げるための構成が行われている。

このGRファクトリーには、ボディ工程や組み立て工程で使用されるベルトコンベアも吊り下げ式の大型搬送機もなく、ファクトリー内のフロアはフラット。工場・・・というよりも倉庫のようにだだっ広いフロアの上を、組み立て車両がAGV(Automatic Guided Vehicle/自動搬送機)に乗せられて移動して、その先々で停止してその場でボディ溶接やエンジン搭載、足まわり搭載などさまざまな工程をこなして徐々に組み立てられていく。トヨタではこの生産方式を「セル生産+AGV」と呼んでいる。

一般的な自動車工場と違ってベルトコンベアはなく、自動搬送機「AGV」でクルマを移動させる。生産台数や生産工程の変更にフレキシブルに対応できる仕組みだ。

GRブランドだからこそ、重要視される性能を高めるため

ではなぜ一般的なライン生産ではないのか。上述した「非効率的」ということも理由のひとつだが、複数のモデルの生産台数を需要と供給に合わせて調整しやすいこと、大幅改良や仕様変更にフレキシブルに対応できることなどが挙げられている。そしてもうひとつが、ボディをより高精度に仕上げることだ。

標準モデルの生産と異なる部分は多くあるが、興味深いのはボディの組み立てや溶接、足まわり組み付けを行なったあとに実施される検査回数の多さであり、その中でもボディ精度検査はとくにGRファクトリーならではのこだわりがあるという。

サスペンションやアーム類など足まわり部品の取り付け穴の位置を0.1mm単位で計測、部品の計測値も集約してデータ解析。互いの微妙なズレを補完して設計どおりになる組み合わせを自動選択するシステムになっている。組み合わせの数は、実に1万通りにも及ぶという。

アーム先端に取り付けられたセンサーでボディ精度の3次元検査が行われ、足まわり取り付け穴の誤差を測定する。

このほかにも、足まわりのセットアップ精度を高める工程はいくつもある。一般的に足まわりの組み立ては全工程の中盤に行われるが、GRファクトリーでは最後に行うことでズレを抑制、アライメント調整の測定&調整の回数を増やしている。モータースポーツ車両で最重要とも言われる足まわりを操作に対して正確に動くように、そして高剛性で、スペックどおりの性能を引き出すために工数も時間もかけているのだ。

ちなみに、この記事を制作しているちょうど今、こうしたこだわりを公開するGRファクトリー見学ツアーが、GRヤリスとGRカローラのオーナー向けに開催されている。クルマの購入検討からサポートを行う「マイトヨタ」の登録オーナーであれば申し込みできるという。参加人数の枠に限りはあるが、気になるオーナーはアカウント登録から始めてみてはどうだろうか。

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