26/04/2025 · 5 ヶ月前

スバル新型「フォレスター」登場! 歴代初の「強力パワートレイン」搭載! 低燃費&走行性能が大幅進化の「本格クロスオーバーSUV」の実力とは?【試乗記】


新型「フォレスター」の内外装はどう進化した?

 1980年代、90年代に起きた「RVブーム」では、三菱「パジェロ」を筆頭に、各メーカーから様々なモデルが登場しました。しかし、その波に乗れなかったのがスバルです。

スバル新型「フォレスター」の実力とは?

スバル新型「フォレスター」の実力とは?

「SUVが欲しい」その声は日本よりも北米で大きかったと言います。

【画像】超カッコいい! これがスバル「新型フォレスター」です!(30枚以上)

 そこで登場したのが1994年に北米向けモデルとして2代目「レガシィ ツーリングワゴン」をSUVに仕立てた「アウトバック」でした。

 ある意味“苦肉の策”でしたが、「乗用車の走り」と「SUVの悪路走破性」を両立する走りが評価され人気を博しました。

 1年後の1995年には日本にも導入が開始されました(当時は「グランドワゴン」)。

 これに気を良くしたスバルは二番煎じを投入。

 それが初代「インプレッサ スポーツワゴン」をSUVに仕立てた「グラベルEX」です。

 そこから「派生モデルではなく専用ボディでSUVを作りたい」そんな想いを形にしたのが、1997年に登場した「フォレスター」です。

 初代/2代目はSUVと言いながらも乗用車派生のイメージが強かったですが、2007年に登場の3代目以降はSUVらしさをより強調したコンセプトに変更。

 これとクロスオーバーSUVブームが相まって販売台数は大きく増加し、今やアウトバックと並びスバルのグローバル販売をけん引するエースへと成長しています。

 その最新作となるのが、間もなく日本で正式発表される6代目です。

スバル新型「フォレスター」と開発責任者の只木克郎氏

スバル新型「フォレスター」と開発責任者の只木克郎氏

 開発責任者(プロジェクト・ゼネラル・マネージャー)の只木克郎氏は、「フォレスターらしさを継承しながらも、スバルファンのみならず他銘柄からも乗り換えてもらえる魅力を数多く盛り込みました」と自信を見せます。

 今回、4月3日の先行予約開始に先駆け、プロトタイプ(ほぼ量産モデル)に袖ヶ浦フォレストレースウェイで試乗してきました。

 エクステリアは先代のイメージを踏襲しながらも、よりスクエアなスタイルに変更。

 スバル定番のヘキサゴングリル&コの字ヘッドランプをやめたフロントマスク、キャラクターラインに頼らないシンプルな造形ながらも軸が通った逞しさを備えたサイド、そしてクリーンなリアと、ラギットさを強調した先代に対してクリーンな印象が増しています。

 パッと見、大柄になったように見えますが、ボディサイズは全長4655mm(+15mm)×全幅1830mm(+15mm)×全高1730mm、ホイールベース2670mmと、ほぼ同等です。

 グレードは3つ用意されており、「プレミアム」は唯一の19インチタイヤ&ホイール装着で都会の風景にもマッチする仕立ての良さ、「Xブレイク」は従来からのタフギアというキャラクターはそのままに、挿し色をオレンジからグリーンに変更しイメージチェンジ、そして「スポーツ」はシンプルながらもブロンズのアクセントでツール感アップと、上手くキャラクター分けが行なわれています。

 ただ、個人的にはXブレイクとスポーツの差が少なめで、どちらにもう一味足したいところ。

 例えば、Xブレイクは先代の北米向けにラインナップされていた「ウィルダネス」、スポーツは先代に設定されていた「STIスポーツ」にしてしまうとか。

 インテリアはセンターに縦型ディスプレイをレイアウトする、最新スバル共通インパネデザインを水平展開していますが、助手席前の加飾デザイン(シボが独特)や独立したシフト周りなどにより、SUVらしい力強さを演出しています。

 個人的には「クロストレック」や「レヴォーグ レイバック」に設定が無いシート空調が設定されたのは朗報ですが、その一方で3つ選択できるフル液晶メーターは、1つくらいフォレスターのオリジナルデザインが欲しいなと。

 運転席に座ると「スッキリとした視界」に驚きます。

 従来モデルも優秀でしたが、新型は数値だけでなくワイパーが見えないような工夫やサイドウィンドウ三角窓の面積拡大などにより、数値ではないリアルな“見やすさ”が向上しています。

 リアシートは足元や頭上の広さやシートヒーター装着に加えて、前席よりもヒップポイントが高めに設定することで、数値以上の解放感が感じられます。

 ただ、アームレスト内蔵のカップホルダーは高さが無く、ペットボトルを入れると支えられない問題は従来モデルから変わらず。

 もちろんシートアレンジとの兼ね合いがあり両立が難しいのは解りますが、もう少し何とかしてほしい部分です。

 ラゲッジスペースはクラストップの荷室開口はそのままに、ユーティリティナット(用品を活用できる)の採用やキックセンサー式のハンズフリーリアゲートの採用など、使い勝手や利便性がアップしています。

歴代初採用となるストロングハイブリッドの実力とは?

 試乗はフラットなサーキットですが、コースの随所にパイロンスラロームやハーシュネス確認用の突起が設けられていました。

 

 今回はウエット〜ドライと言う難しい路面環境での走行となりましたが、むしろ新型のポテンシャルの高さをチェックするには、むしろ好都合だったかもしれません。

試乗会では様々な新型「フォレスター」の様々なグレードが用意された

試乗会では様々な新型「フォレスター」の様々なグレードが用意された

 新型フォレスターを走らせて驚いたのは、従来モデルで“大味”に感じていた部分が無くなり、穏やかながらもシャキッと目覚めた印象が強いことです。

 それはフットワークだけでなくパワートレインにも言える事です。

 パワートレインは先代から採用される1.8リッター直噴ターボ×リニアトロニック、そしてクロストレックに先行搭載された2.5リッター自然吸気×ストロングHEV(シリーズパラレル式ハイブリッド)の組み合わせです。

 AWDシステムはどちらもトルクスプリット式ながらも、1.8リッター直噴ターボはACT-4(油圧式)、ストロングHEVは電子制御AWD(多板クラッチ式)を採用します。

 1.8リッター直噴ターボは従来モデルよりも車両重量がアップ(70kgから80kg)していますが、動力性能的はほぼ同等と言っていいレベルです。

 ただ、静粛性アップ(アッパーインシュレーターやCVT防音カバー拡大、CVT剛性アップなど)の効果も相まって、アクセル開度が大きめのシーンでエンジンの唸りが聞こえにくくなった事で、動的質感はアップしています。

 とは言っても、アクセルに対するツキの悪さや実用域(2000rpmから3000rpm)のトルク不足は気になるところ。

 電動車と違って回すほどに力が増す特性は古典的ながらもまだまだ魅力はあるので、個人的にはターボ+マイルドHEVとの組み合わせもトライしてほしい。

 ストロングHEVはハード/ソフト共にクロストレックと同じですが、乗ると似ているようで違う印象。

 もちろん、高出力モーターのアシストと燃費の目玉を拡大した2.5リッターエンジンの連携により、発進時や巡航から加速の応答性、瞬発力の高さなどは実感するも、クロストレックのような「元気がある」よりも「余裕がある」と言った印象が強いです。

 この辺りは車両重量の違い(クロストレック+約100kg)が大きいですが、逆を言えばそれくらいの重量差を許容できる「懐が深い」パワートレインと言ってもいいでしょう。

 加えて、ガソリン車以上に入念に施された振動・騒音対策(各部に配置された吸音材、インシュレーター、フロアマットなどなど)により、常用域ではエンジンがより遠くに搭載されているかと錯覚してしまうくらいの静粛性の高さは、フォレスターの車格に見合ったレベルにあると思いました(逆にクロストレックはエンジンが少々主張する傾向)。

 プラットフォームは2代目「レヴォーグ」や「WRX S4」から採用されるフルインナーフレーム構造SGP(スバルグローバルプラットフォーム)に加えて、構造用接着&剤適用拡大や高減衰マスチック、シート直付、スポットタイプナット採用なども相まって、車体剛性は従来比6%アップ。

 絶対的な数値だけでなく、剛性バランスや力の流れの連続性などにもこだわっており、操作に対して思い通りにクルマが動く車体に仕上がっています。

 このように体幹を整えた車体に合わせてサスペンションも最適化されています。

 合わせて1.8リッター直噴ターボ車はピストンポート孔を縮小した、「改良型・超飽和性ダンパー」の採用。

 ストロングHEV車は横力時のフリクション荷重依存を減らすために「リアダンパーのロッド延長」も行なわれています。

 フットワークの進化を一言で言うと、従来モデルは「SUVにしてはいいハンドリング」でしたが、新型は「SUVであることを忘れるハンドリング」です。もう少し具体的に説明していきましょう。

 雑味のないシャキッとしたステアフィール、操舵に対してスッとノーズがインを向く回頭性の良さ、前後の重量バランスが適正化されたかのように4つのタイヤに荷重を分散しながら曲がる様などは最新スバル車共通の印象ですが、新型フォレスターのハンドリングは他のスバル車よりもロールを活かして路面をしなやかに捉えながら曲がるタイプです。

 ロール量はどちらかと言えば大きめですが、そのコントロールが絶妙(=挙動変化はゆっくりだけど上手に収束)かつ、タイヤの接地性変化も最小限で粘りあるグリップも相まって、ドキッとするようなウエット路面でも自信を持って一発で舵を決めてコーナリングすることができました。

スバル新型「フォレスター」試乗の様子

スバル新型「フォレスター」試乗の様子

 更にパイロンスラロームも試してみましたが、Gの収束が早いので切り返し時に同乗者の頭が揺さぶられにくく、結果としてクルマ酔いもしにくいはず。

 ちなみに車体の動きや揺さぶられの少なさは、車体やサスペンションだけでなく、空力アイテム(フロントエアアウトレット&エアダム、リア周りフィン)による空力操安も大きく寄与しているそうです。

 快適性はサーキット路面なので断定はできませんが、縁石を乗り越えや路面の敷かれた突起の乗り越えた感じから推測すると、バネ上の「フラット感」の高さと乗員に伝わる入力の「優しさ」は、クラストップレベルなので兄貴分のアウトバックに匹敵する乗り心地を実現しています。

 ちなみにパワートレイン問わず乗り味は基本的には共通ですが、重箱の隅を突くと1.8リッター直噴ターボはどちらかと言えばクロストレック方向のキビキビしたクルマの動きとスッキリした足の動き、逆にストロングハイブリッドはどちらかと言えばアウトバック方向の重厚なクルマの動きとシットリとした足の動きに感じました。

 スバルの一丁目一番である安全に関しては、フルインナーフレーム構造SGPのアップデート(各部の最適化やフロントサブフレーム追加、高電圧バッテリー追加に伴う最適化)による衝突安全性アップはもちろん、アイサイトXや世界初となるサイクリスト対応歩行者保護エアバックの採用など抜かりなしです。

 そろそろ結論に行きましょう。強烈なインパクトや飛び道具のようなアイテムはありませんが、全方位で進化が感じられた総合力の高い1台だと感じました。

 フォレスターの役目は「スバルの裾野を広げること」、つまり普通の人が普通に乗った時に「いいよね!!」と言ってもらえること、更にスバルファンではない他銘柄のユーザーにも「いいよね!!」と言ってもらうことが重要であり、そこに関しては全く外していないと思います。

 気になる価格はガソリン車が先代+約50万円、ストロングHEVが先代+約80万円と値上げ幅は大きく見えますが、従来モデルはナビがオプション設定(30万円前後)だった事に加えて、性能向上分や装備類の充実を加味していくと、意外とバーゲンプライスかなと。

 ちなみに残価設定ローンの残価率は従来モデルより高いはずなので、実際の支払い額で判断してほしいところです。

 一方で、現状は1.8リッター直噴ターボがスポーツ、ストロングHEVがXブレイク/プレミアムとパワートレインとグレードの組み合わせが決め打ちになってしまっているのが残念なところです。

 2つのパワートレインがどのグレードでも選択できるようになれば、更に幅広いユーザーを獲得できると思っています。

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